「骨折はしていないようだな。捻挫か……」
ハイヒールでこけただけで骨折したら、さすがの私もヘコミます。
それよりもっ!
いきなり足を掴みあげられたものだから、ワンピースの裾が限界までまくれ上がって、かなりきわどい状態になっている。
ギュッとまくれ上がった裾を引っ張り下ろし、どうにか声をしぼりだす。
「だ、大丈夫です。本っ当に、大丈夫ですからっ!」
「ちょっと、待っていろ、今、医者を呼んでくる――」
社長が立ち上がるのと凛とした声が響いてきたのは、ほぼ同時だった。
「祐一郎さん、もういらしていたのね」
入り口から、優雅な足取りで歩み寄ってきたのは、年配の女性。
なにがしかのブランドものだろう、ぜったい既製品ではありえない、身体のラインにフィットした、ライト・ブラウンのアンサンブルを身に纏っている。
指輪、ネックレスにイヤリング。
いったいどれくらいの値段がするのか、皆目見当がつかない。
一目で、セレブと分かる人種だ。
椅子に座る私と、私の足元で片膝をついた社長。
私たち二人の姿にその人は、少し驚いたように目を見はって言った。
「あら、何かトラブルでも?」



