――あれ?

ここって、まさか……。

「ホテル・ロイヤルの地下駐車場に、そっくり……」

「そっくりなんじゃない。ここは、ホテル・ロイヤルの地下駐車場だ」

丁寧に社長が訂正を入れてくれるが、ちっともありがたくない。

――うううっ。

よりによって、ここで食事ですか。

私のトラウマスイッチが、ONになる。

ここは信じてた婚約者に手酷く裏切られた、まさにその場所。

一カ月半前の痛ーい記憶が、映像を伴ってリアルに蘇りそうになって、私はぶるぶると頭を振った。

あれは、過去のこと。

もう、忘れるって、決めたこと。

「……一つ言っておくが」

「はい?」

「食事の相手は、ウチの大株主だ」

「はい」

失礼がないように、頑張ろう。

そんな決意を込めて、しっかりとうなづく。

「話は俺がするから、お前はひたすら笑って相槌をうっていればいいから。余計な口は挟まないこと」

それは少し残念な気がするけど、ビジネスの話をしろと言われても、今の私には無理だから、まあ仕方ないか。

「……はい、わかりました」