「……そこに、乗るんですか?」
「どこに乗るかは、俺の自由だろう?」
それは、そうでしょうけど。
普通、偉い人は、後部座席に乗りませんか?
「助手席って、事故った時の死亡率が高いって、聞いたことありますけど……」
だから、後ろへ行って!
行けったらっ!
行けっ!
そんな念波を飛ばしてみるけど、不動明王様には顔の面が厚くていらっしゃるようで、まったく通じない。
「いいから、早く出せ」
ご主人様にピシャリと言い渡され、哀れな下僕は、すごすごと運転席におさまる。
――うっ、広い。
そして、足が届かない。
社長サイズに合わせてあるのだろう、
私には広すぎる運転席の空間を、あたふたと調整していたら、隣からクスリと笑い声が降ってきた。
笑わば、笑え。
私はちゃんと、事前報告しましたからね。
後で文句、言わないでくださいよね。



