――なに、今の?
聞き違い……だよね?
金縛り状態で動きを止めたまま、ゆったりとコーヒーカップを口に運ぶ社長の動きを、呆然と目で追う。
優雅な所作でカチャリとコーヒーカップをテーブルに置いた社長は、ソファーに深く背を預け、つまり、ふんぞり返って長い手足を組むとニッコリと口の端を上げた。
不敵に微笑む銀縁メガネの奥の瞳が、射抜くように真っ直ぐ私を捉える。
刹那、背筋に走る戦慄に、息を飲む。
まるで、狩人が獲物に狙いを定めた瞬間のような緊張感が、その場に満ちた。
「社……長?」
「途中で逃げ出すかと思っていたが、一カ月持ちこたえたことは、ほめてやるよ」
「……はい?」



