インスタントや缶コーヒーのブラックは苦味ばかりが舌に付いて、苦手で飲めないんだけど、これは大丈夫。
――うん、美味しいや。
「美味しいです」
素直な賛辞の言葉を口にすれば、社長は口元に苦笑を浮かべた。
「無理しないで、砂糖入れたら? ミルクもあるし」
よほど、お子ちゃま舌に見えるのだろうか?
「私だってブラックコーヒーくらい飲めるんですよ。一応、二十歳を超えた大人なので」
心外だな。
そんな気持ちを込めて、心持ち口をとがらせて言うと、社長は面白そうに鼻先で笑った。
「ふーん、大人ねぇ」
――ふーん?
今までになかった初めての反応と、砕けた口調、
というより、不遜とも取れるその口調と表情に、走る違和感。
私の、コーヒーカップを持つ手の動きが、ぴたりと止まる。



