「その勢いで立ったら、今度は、天板に腰を打ち付けるぞ?」
――そうか。
だから、引き戻してくれたんだ。
で、でも、この状況は、かなり恥ずかしい。
更に、この状況を作ってしまった自分のドジさ加減は、もっと恥ずかしすぎる。
穴があったら、入りたい。
穴が無くても、掘って、隠れたい。
あまりの情けなさに涙ぐんでいると、緩い抱擁は、静かに解かれた。
ずりずりずりと体を後ろにずり下げ、身体を縮めて、ぺこりと頭を下げる。
「す、すみませぇん……ありがとうございます」
「ケガがないなら、かまわない。コーヒーなら、冷蔵庫に入っているから、それでいい」
「冷……蔵庫?」
ヨロリと立ち上がり、部屋の隅に設置されている大型冷蔵庫の扉をパカリと開ければ、その中に入っていたのは、種類別に並べられた一面の缶コーヒー。
ずらりと並んだ様子は、もう『コンビニですか?』かと思うほど。



