『ドン』と、派手な音が、耳朶を叩いた。
――が。
襲ってくるはずの衝撃も痛みも、感じない。
否、
確かに衝撃はあった。
でもそれは予想していたものよりも、ずっとソフトで、しかも温かかった。
――背中が、柔らかい?
ってか、温かい?
なんで?
状況が分からずに、おそるおそる目を開ける。
目の前、目線よりも少し上には、キッチンの白い天板。
ちょうど、尻餅をついている感じの高さだ。
あのまま、スッ転んだのは間違いない。
けど、なんで、背中が、温かいの?
「……何を、やってるんだ、君は」
「ふ……えっ!?」
すぐ近く、
本当に近くの頭上から降ってきた重低音の声に、全身ピキリと、見事に固まる。



