全身に走る一瞬の浮遊感と、ほとんど同時に襲いくる冷たい戦慄。
このままこの狭い通路で後ろに倒れこんだら、私の後頭部を待っているのは壁面収納の木製の扉。
――あの扉、立派で、かなり堅そうだったなぁ。
この勢いでまともにぶつかったら、ただじゃすまない気がする。
って、ドジすぎるよ、私。
妙に長く感じる数瞬の間。
そんなことを、緩慢な思考でノロノロと考える。
武道の達人ならぬ、どちらかと言えば運動音痴の私に受け身など取れるはずもなく、そもそもそんなことができるようなら、こんな窮地に陥ってはいない。
体は重力にひかれるまま、後ろに自由落下。
私は、悲鳴すら上げられずに唯一取れる防御対策、というか防御反応で、思いっきり目をギュッっと瞑りこんだ。



