『娘に、代わってもらえますか?』
「わかりました」
はい、と、社長にスマホを差し出され、ぺこりと頭を下げて受け取る。
耳に当てれば、父の特大のため息が響いてきて、申し訳なさでいっぱいになる。
ただでさえ、会社のことで大変なのに、よけいな心配をさせてしまった。
「お父さん、心配かけて、ゴメンね……」
他に言葉が見つからずそう言うと、さっきの剣幕はどこへやら、いつもの穏やかな父の声が耳に響いて来た。
「事情は分かったから、気を付けて帰ってきなさい。慌てないでいいからな……」
あまりに優しい響きに、思わず鼻の奥がツンと熱を帯びる。
「うん。分かった。じゃあね」
ぷちり、と通話を切れば、その場には沈黙が落ちた。



