「失礼しまーす」

元気に声を掛けて部屋のドアを開け、足取りも軽やかにスタスタと歩いていくスマイリー主任の後を、重い足取りで付いていく。

不動社長は、デスクのパソコンに向かって何やらタイピング中だった。

――こんな時間まで、仕事してるんだ。

なんだか、すごいなぁ。

伊達に、社長さんをやってるんじゃないんだ。

軽やかなキーボードさばきに、思わず見惚れてしまう。

「社長。篠原さん、無事に初仕事完了しましたよ」

仕事の疲れなど、みじんも感じさせない爽やかな主任の言葉に、社長は、キーボードを打ちながら眼鏡越しに少し鋭い視線をチラリと上げる。

その瞬間。

なぜか『ドキリ』と、鼓動が跳ねた。