ぼくのことだけ見てなよ

*楓side*

あーぁ。やっちゃった…。なにしてるんだろ、ぼくは。近付いても逃げないからって、付き合ってもいないのに、あんなことして、きっと椿姫は誤解してるんだろうな。

ちゃんと自分の気持ち伝えなきゃ、と思ってたのに、椿姫は勢いよく立ち上がると、全速力で走っていってしまった。

追いかけようとも思ったけど、きっと椿姫が行く場所はだいたい決まってる。

だからぼくは、ゆっくり立ち上がると、きっと椿姫が行くであろう場所に向かうことにした。

「おっせーぞ。つか、飲みもん買ってくんじゃなかったのかよ!」
「あー、忘れてたよ」
「んだよ、ソレ!!」

ぼくが向かった場所は、鈴井さんと孝宏がいるところだった。けれど、肝心の椿姫はいなかった。

「美島くん」
「ん?」
「椿姫ちゃんは…?」
「あー、先に走って行っちゃったから、ココだと思って来たんだけど…。一度も来てない?」
「…うん」

おかしいなぁ。じゃあ、他にどこに行く?ここじゃないとすると……検討がつかない。

「鈴井さん、椿姫が行きそうな場所ってある?」
「え?椿姫ちゃん……。うーん、椿姫ちゃんって意外と寂しがり屋だったりするから、あまり一人で、どこかに行くって考えられないんだけど…。行くとしたら、ガマンできなくなってトイレとか…?」
「あまり一人で、どこかに行かないってホント?」
「えっ?あ、うん。もちろん下校する時は、椿姫ちゃんと別れたら一人で帰るけど、移動教室だって、トイレだって、全部わたしと行動してるから」
「……じゃあ、椿姫が一人で行動するって、あまりないってこと…?」
「う、うん。でも、さっきも言ったけど、ガマンできなくてトイレに行ったかもよ?」

鈴井さんは、そう言ったけど。なんとなく、ぼくの中の勘で胸騒ぎがした。