ぼくのことだけ見てなよ

突然那津を呼ぶ男性の声が聞こえ、那津と二人振り返ると、見たことないウチの制服を着た男子と、となりにはもう関わりたくないと思っていた、美島の姿があった。

「げっ、さっそく美島っ」
「つ、椿姫ちゃん!ココロの声出ちゃってる!」
「え、ウソっ!やばっ…」

それは時にすでに遅く…。

「ホント、つくづく失礼な女」
「は、はぁっ!?あんたのほうが、」
「椿姫ちゃん!みんな見てるからっ!」
「…っ、ん。ごめっ」

美島に言われた言葉にカチンときて、言い返すも那津に注意され、わたしは口を閉じた。

「みんな、落ち着いた?じゃあ、俺らも座りますか!」

美島のとなりにいた男子が、そう言って、あろうことか、わたしたちの席に着席しやがった。

「なんで、ココ座んの!?席たくさん空いてるし!」
「えー、いいじゃん?仲良くしようよ」
「つーか、誰」
「うわっ、ひっど!ね、楓。ひどくないっ?」

その美島のとなりにいた男子が、美島に泣きついた。

「椿姫ちゃん、彼、同じクラスだよ」
「え?そうなの?」
「うん。そして、わたしのとなりの席の、」
「松井孝宏(まついたかひろ)!よろしくね、椿姫ちゃん!」
「名前で呼ばないで。気持ち悪いから」
「えー。ひどーい」