ぼくのことだけ見てなよ

「じゃあ、お昼に行こうか」
「え、でも、たこ焼き」
「孝宏、もう終わるでしょ?」
「おぅ。孝宏サマ、なめんなよ?」

見ると生地はもうボウルに入っていなくて、今焼き上げてるので最後だった。

「ってことで、あと10パックで終わりなー!」

松井が叫ぶと並んでたお客さんから「えー」なんて声が聞こえてきたりして。

でも生地がないと、作れないわけで…。あっという間に10パックも売れてしまった。

「というわけで、椿姫。お昼行くよ」
「え?片付けは…?」
「ん?やってくれるんだよね?キミたちが」
「えっ、わたしたち…?」
「うん。だって、手伝いに来てくれたんでしょ?じゃ、よろしくね?ほら、行くよ」
「えっ、美島!」

あーぁ。美島ファン、ポカーンとしてるよ…。そりゃそうだ。だって目的は、わたしを追い出して美島といたかったんだもの。

「あー、腹減ったぁ。楓、なに食う?」
「ぼくはなんでも。あ、椿姫。今日お弁当は作ってきてないの?」
「え、お弁当?作ってないよ。だって、学祭なんだし、たまには楽したいもん」
「なんだー」

あれ、わたしのお弁当食べたかったの?それなら、作ってこればよかったかな?

「それよりさぁ、楓やるよな」
「なにが」
「あのファンどもの悲鳴!那津ちゃん、聞いた?」
「う、うんっ。すごい悲鳴だった…!」
「ちょ、それ!思い出させないでよ!!もう忘れたい過去なんだから!」
「ウソでしょ。ひどくない?それ」
「ひどいのは、美島でしょ!?」
「えぇ?ぼくに舐められるなんて名誉なことでしょ」
「………」