ぼくのことだけ見てなよ

「こんな感じ。なんとなく理解できた?」
「なんとなく、なら……」
「そ。じゃあ、ボケッとしてないでクルクルして」
「……うん」

何回やっても、うまくできなかったんだから、そんなすぐに出来っこないのに…。

「あれ…?なんか、できる…。ね、ねぇ!美島!わたし、できてないっ!?」
「ん?あー、そうだね。できてるよ、上手」
「………」

なんだろう、この褒め方。すっごい腹立つんだけど…。子供を褒めてる感じ…。

でも、まぁいいか。できるようになったんだし!あとはスムーズにできるようになったら、ジャンジャン売ればいいだけだ!

松井が呼びかけして来るお客さんもだけど、美島目当てに来るお客さんもたくさんいて、たこ焼きはあっという間に残りわずかというところまできた。

「及川さん?お昼まだでしょ?わたしたち変わってあげるから、鈴井さんと行ってきたら?」

そんな時だ。美島のファンどもが現れたのは。ギロッと睨まれ、美島から数歩離れると、今だ!とばかりにグイグイ美島の周りをファンどもが囲む。

「楓くん、及川さんたち女の子だし、お昼ないとかわいそうだと思うの。だから、わたしたちが変わってあげるからね?」

100%ウソでしょ。かわいそうだなんて、これっぽっちも思ってないくせに。ただ、美島の傍にいたいだけじゃんか。