ガタンっと席を立つと、反応してくれた美島。その美島に、ゆっくり黒板に指を差した。

「だ、だってアレ……」
「え?まさか、聞いてなかったの?及川〝はい〟って返事してたでしょ」
「だって、どうでもいいや。って思ってたから…。でも、どうして……」

どうして自分が選ばれたのか、まったくわからない。無意識のうちに立候補してた?いや、そんなワケない。

じゃあ、どうして自分がなった?確か〝及川さん、いいですか?〟と、聞かれた。

ということは、誰かが推薦……いや、押し付けた?パッと、顔を上げクラスを見渡す。

すると、なぜか美島のファンたちが、わたしのことを睨んでいた。

「え、なに…。なんで、わたし睨まれてるの」
「椿姫ちゃんっ!大丈夫?」
「那津っ!」

パニクるわたしに、自分の席から小走りで走ってきた那津。思わず泣きそうになりながらも、那津を見上げた。

「及川、聞いてなかったんだって」
「え?そうなのっ!?」
「うん…。ボーッとしてました…」
「あー、そうだったの……」
「でも、いいじゃん?楓と一緒だし!」
「えっ?」

那津のうしろから来た松井。わたしたちの会話が聞こえてたんだろう。松井の言葉に驚いて、となりにいた美島を見た。