「やっぱ好きなんじゃん?」
「チガウから!」
「いいじゃん!俺は美島妹と、椿姫は美島兄と。将来結婚したら、おもしろくない?」
「淳平。ホントに、わたし好きじゃない。好きになりたくもない」
「なぁ。まだ、椿姫の中で消えてないのか?」
「え?……あ、うん」
「そっか」

最初はなんのことかわからず首を傾げるも、すぐに意味がわかって頷いた。

淳平は悲しそうに、寂しそうに笑うとソファから立ち上がった。

「よし、今日は俺がごはん作ってやるよ!」
「えっ!?いいよー。家が火事になる」
「なっ!どういう意味だよ!」
「そのまんまの意味だよ」

ありがとう、淳平。きっと、心配してくれてるんだよね。淳平なりにわたしのことを。

その気持ちだけで、じゅうぶん嬉しいよ。わたしはさ。生意気な弟だけど、姉思いの優しい弟だよアンタは。



週が明けて月曜日。続々と、テストが返ってくる日だ。美島とは「おはよう」しか言ってない。

もともとそんな感じだったし、もう関わらないってイチバン最初に思ったことだし、今さらなんてことない。

なのに、どうして。ココロにポッカリと穴が空いた感じがするんだろう。

テストは、わたしの想像より遥かに上回る点数ばかりだった。特に数学は、まさかの95点。

「及川、何点だった?」
「えっ、あっ、きゅ、95点だった…」
「お、すごいんでしょ。よかったね?」
「あ、うん。ありがとう」

なんでだろう。美島が笑うと、嬉しいと思ってしまう。いや、たまたま近くにコイツがいたから、ただそれだけだ。ゼッタイ、そう…。