ぼくのことだけ見てなよ

そして全部食べ終わると、美島はクチビルをペロッと舐めた。そして、わたしを見ながら笑う。

「ごちそうさま。間接キス、たくさんしちゃったね?」
「……っ、」

最悪だ…。よりによって、美島なんかと間接キスしちゃうなんて…。

「えぇっ、俺も椿姫ちゃんとしたかったー。間接キスぅ」
「うっさい、くたばれ!」
「椿姫ちゃん、怖いー!助けて、那津ちゃーん!」
「えっ?えーと……」

松井が、ふざけて那津に抱きつくフリをすると、戸惑いながらもサッとよけた那津。

「えぇっ?那津ちゃん、避けるなんてひどーい」
「ご、ごめんなさいっ…。でも、イヤだったので」

那津は、たまに毒を吐く。しかも真顔で言うから、松井はポカンとしてる。

「鈴井さんって、顔に似合わずキツイこと言うよね」
「えっ?あ、うん……」

急に話しかけてくるから、ビックリしちゃった…。思わず答えたけど、慌てて目を逸らす。

すると頭の上で美島が、クスッと笑った気がした。思わず見上げると、美島は笑ってなかった。