ぼくのことだけ見てなよ

そして、そんなわたしに那津がズバッとドスッと言い放つ。

「椿姫ちゃん、考えないで買ったの?わたし、最初っからわかってたよ?」
「えー!那津ぅ!言ってよ!!」
「言ってよ、って…。普通わかるでしょう?それにさっきブルーベリーのほう食べた時に、美島くんに〝食べる?〟って聞いてなかった?」
「うぅ……」

単純に考えれば、確かにわかることなんだけどさ…。そうなんだけどさ…!さっき〝食べる?〟って聞いたけどさ!

「クレープのことしか、頭になかったよ…」
「ふふっ、椿姫ちゃんらしいね?」
「笑わないでー!わたし今、すっごい悩んでるんだからー!」
「ごめんごめん。でも、もう食べちゃってるんだし、今取り返したら、さらに間接キスになるよ?」
「いや!それも、いやっ!!」

そんなの考えたくもないっ!いや、汚いとかじゃなくて…。恥ずかしいじゃない!?

あぁ、もっとちゃんと冷静に考えるべきだったよ…。でも頭が単純なわたしは、ティラミスのクレープを一口食べれば、忘れてしまうんだ。

「おいしっ」
「よかったね、椿姫ちゃん!ふたつも食べれて!」
「っ、那津!思い出させないでよ!!」
「あははっ!」

那津に遊ばれてる…。完全に遊ばれてるよね、これ。でも、もう済んだことだし仕方ない!忘れよう!

「ねぇ」
「ん?」
「いつまで、のんびり食べてるの?及川待ちだけど」
「へっ!?あ、ごめっ!急いで食べちゃうから!」
「全部、食べれるの?」
「わ、わかんないけど!食べてみる!」

だって、間接キスがわかっちゃった今〝残りを食べてください〟なんて言えないもん。