ぼくのことだけ見てなよ

半分ちょっとは食べただろうか。さすがにこれ以上食べたら、ティラミスのほうが食べれなくなるなと思って美島に声をかけた。

「美島…。ティラミス、食べたい…」
「もういいの?好きなだけ食べればいいのに」
「もう半分食べたもん!ティラミス食べれなくなっちゃうし」
「ふーん、そっか。じゃあ、はい。ティラミス」
「うん。ありがとう」

ティラミスを受け取って、ブルーベリーのほうを美島に渡す。そして、ティラミスを一口食べると、あることに気付いた。

さささっ、と那津のほうへ、さりげなく移動する。那津は不思議そうに、首を傾げた。

「どうしたの、椿姫ちゃん」
「うん…ねぇ、那津」
「ん?」
「わたしさ、ブルーベリーのほう先に食べたじゃない?」
「うん」
「でさ、今ティラミスのほう持ってるでしょ?」
「うん」
「で、わたしが食べてたブルーベリーが今、美島のところにあって……」

ここで一旦、深く深呼吸をする。だって、だって、わたしにとったら事件なんだもん!

「なにが言いたいの?椿姫ちゃん。もうちょっと詳しく言ってもらわないと…」
「いや、うん、だからね?あぁ〜っ」
「え?なに、どうしたの」

突然、頭を抱えたわたしに、那津が驚いて、わたしの顔を覗き込んだ。

「な、那津……」
「ん?」
「わ、わたし…。美島と…。間接キス、してる…」

わたしが頭を抱えたのは、美島が松井としゃべりながら、わたしの食べていたクレープを食べたから。