ぼくのことだけ見てなよ

「ねぇねぇ、どれ食べる?」
「うーん、どうしようかなぁ?椿姫ちゃん決まったの?」
「ううん。このブルーベリーレアチーズケーキとティラミスで悩んでるんだよねぇ。那津は?どれで悩んでるの?」
「うーんとね、ストロベリーチーズケーキクリームとショコラケーキクリームで悩んでたんだけど、ストロベリーチーズケーキクリームにしようかな!」

結局4人で来たクレープ屋さん。美島がわたしの誘いを受けたことも驚いたけど〝二人で〟って言われた時は、一瞬時間(とき)が止まった気がした。

咄嗟に〝みんなで!〟って言ったけど、一瞬おもしろくなさそうな顔をしたのは見間違い、だよね?

でも急に二人でクレープ食べに行くとか、なに話したらいいかわかんないし…。

「どっちも頼んだら?」
「は?」

どちらにしようか悩んでるわたしに、美島がおかしなことを言う。

「だって、ふたつとも食べたいんでしょ?」
「……そうだけど、でもふたつも食べれるワケないでしょ!」
「いいよ、ぼくが残ったの食べてあげるから」
「えっ、い、いいよ!」
「どうして?」
「どうして、って…。それより美島、甘いモノ好きなの?」
「ううん、そこまで好きじゃないけど」
「はぁ?だったら、なおさら!」
「いいんだって。今はそういう気分なんだから。孝宏は、決まったの?」
「ん?俺はチョコバナナ!」
「あっそ」
「うぉい!なんだよ、その反応!」

美島の考えてることが、よくわからない。甘いモノ苦手なのに、どうして残ったの食べるから、ふたつ頼めなんて言うの?

でも美島は、わたしの言葉を無視すると、松井の言葉もスルーして「コレとコレ、ちょうだい」と写真を指差し、わたしの食べたいクレープを注文してしまった。

それに続き、那津と松井もストロベリーチーズケーキクリームとチョコバナナをそれぞれ注文した。