ぼくのことだけ見てなよ

「えっと…。みんなで、勉強しに行く?」
「お、おぅ!そうだそうだ!勉強しに行こうぜ!な、楓?」
「あ、あぁ。うん」
「ほら、那津も!行こう?」
「……うん」

あれだけみんなと勉強するのがイヤだったくせに〝勉強しに行く?〟なんて言っちゃったよ…。でも那津も気まずそうにしちゃってたし、ね。

わたしの言葉に、松井がノっかってくれて、なんとかみんなで学校を出ることができた。

昨日と同じファーストフードに行き、昨日と同じ座席に座り、黙々と勉強をする。うるさい松井でさえ、静かだ。

「ね、美島。これ、どうやって覚えたらいいの?」
「んー?あー、これね」

美島も、すごく優しくてカラダがかゆくなってしまった。って、わたしも素直に聞いてる時点でかゆいんだけど…。

「あ、ヤバっ!もう6時過ぎてる!ごめっ、わたし帰る!」
「椿姫ちゃん、大丈夫?」
「うん、多分。でもアイツうるさいから、急いで帰るわ!」
「待って、わたしも帰るっ」
「え、いいの?」
「うんっ」
「そっ?じゃあ、美島と松井!また明日ね!」

バタバタと那津と二人で、外に出る。いつものコンビニで別れると「じゃあ、また明日ね!」と那津に手を振りダッシュで家に帰った。

「ねぇ、孝宏」
「あん?」
「〝アイツ〟って誰?」
「俺が知るかよ」
「……だよね。知ってたら孝宏の息の根止めちゃいそうだし」
「おまっ…。恐ろしいこと言うなよ!つか、楓。椿姫ちゃんのこと気になんの?」
「ううん、べつに」
「は?」
「んー、でも〝アイツ〟の正体は気になるかなぁ」
「あ、そ…」

椿姫と那津が帰宅したあと、オトコ二人の会話。孝宏は〝それが気になるって言うんだろ〟とは、言えなかった。