「この公式、わかる?」
「え、あ、なんと、なく…?」
「ウソでしょ、そこから?よく、この学校入れたね」
「……うっ」

あの時は、必死だったんだもん!!この制服が着たくて、目に隈作りながら勉強したんだもん!!

「じゃあ…。これは?解ける?」

そう言ってスラスラと問題を書いた美島。これって、中学の時に必死にやったのと似てる…。

「多分…解ける」
「ん、じゃあやってみて」
「うん…」

なんで美島に教えてもらってるんだろう…と、ココロの中では思うけど、なんとなく歯向かえずに目の前の問題を解いてみる。

えっと…確か、これはこの公式を使うはずだから…こうやって…こうやると……。

「できた!」
「うん、正解。じゃあ、これも解けるよ」
「え、さっきの?」
「そ。数字がたくさん並んでるから、わかんない!ってなるだけ。ほら、ここ見てみなよ。この部分隠したら、今解いたのと一緒でしょ」
「あ、ホントだ。あれ?じゃあ、同じ公式…?」
「うん。及川はパッと見て、できない!って決めつけてるだけ。ここに入るために勉強したんでしょ?基礎はできてるんだから、大丈夫だよ」
「そっか…。あの…えっと…」

肝心な言葉が、いざという時に出せない、言えない…。わかってる、教えてもらったんだから言わなきゃいけないって。でも…。

「なに?」
「………あ」
「あ?」
「り、がと……」