でも食べてみるって言うんだから、食べてもらおうじゃないか。

そう思い、片付けたお弁当をまた取り出すと、松井の前にスッと差し出した。

…のに。松井が肉詰めを箸で摘まむ前に、チガウ手が伸びてきて、あっという間にひとつ肉詰めがなくなった。

「え、どうしたの。美島まで」
「うるさい」
「うるさいって!」
「いいでしょ、食べてみたくなったんだから」

なに、なんなの。松井も那津も驚いて、美島を見つめる。

「俺も、もらう!」
「あ、うん。どうぞ」

松井もすぐに肉詰めを摘まむと、美島と二人〝せーの〟で口に入れた。

どうなんだろう。美味しくないかな。那津みたく、美味しいと思ってくれたかな。

不安で二人をジッと見つめると、松井も美島も無表情になった。

「うまっ」
「うん、食べれる」