「あの、夜分遅くにお邪魔して、すみませんでした」
「いいえ、ウチはいいのよ?また、いつでもいらっしゃいね」
「ありがとうございます」

美島のお母様は、笑顔で送り出してくれた。咲希ちゃんに淳平のことよろしくお願いしたかったけど、美島は知らないから、なにも言えず会釈だけして、美島の家を出た。

家を出たはいいけど、さっきのことで怒ってるのか、美島は一言もしゃべらなくて、チラッと目だけ向けてみたけど、その表情を読み取ることはできない。

そうこうしてるうちに、我が家へ着いてしまった…。すると、美島の足も止まった。

「じゃあ、おやすみ」
「美島っ」
「なに」
「あのっ、送ってくれて…ありがと」
「うん」
「おやすみ、なさい…」
「うん。じゃあ、また学校でね」
「……うん」

結局、なにも言えなかった…。でも、美島笑ってたし、大丈夫かな…。やっぱ、あそこで拒んだのはマズかったのかな…。

あーっ!もう、わかんないっ!一つ解決したら、一つ問題が出てくるんだから!!

そんなことを考えながら、美島の背中を見つめる。少しくらい気にして振り向いたってくれてもいいのに、ちっとも見てもくれない。

少しだけムッとしながらも、わたしは淳平が待ってる家に帰ることにした。

「ただいま」
「おかえり。…って、なんかあった?」
「えっ、なんでよ…」
「いや、なんとなく」
「…べつに、なにもない。疲れたからシャワーしてくる」
「美島兄貴とは、どうなったの」
「……付き合った」
「じゃあ、なんでそんな顔してんだよ」
「べ、べつになんだっていいでしょ!」