ぼくのことだけ見てなよ

「部屋に行くって…。話ならリビングでも、できるでしょ?」
「無理、できない。椿姫、こっち」
「えっ、いや、ちょ、待って!」

勝手にお邪魔しといて、お母様にロクに挨拶もしないで部屋に行くとか、ゼッタイ印象悪いじゃんね…。

リビングにはお父様もいるけど、お父様はチラッと見ただけで気にならないのかテレビを見ていた。

「あ、お兄ちゃん。お帰りなさい!旅行楽しかった?」
「咲希、ただいま。うん、楽しかったよ」

妹ちゃんだ。自分の部屋から出てきたのか、リビングに来るなり美島の傍に寄ってきた。

そんな美島も、お母様とはチガウ態度で接していて、淳平が言うようにシスコンだと思った。

「はじめまして。お兄ちゃんの彼女さんですか?」
「えっ、あっ、えっと…。椿姫、及川椿姫って言います」
「及川っ!?……あ、いや、ごめんなさい。椿姫さんって言うんですね。お兄ちゃんがいつもお世話になってます!美島咲希って言います」
「咲希ちゃん、ね。すごくカワイイね。やっぱり兄妹だから似てるね!」

やっぱり咲希ちゃんも、わたしの名字にビックリしたよね。そうだよね、彼氏の姉だもんね。そりゃ、驚くよね。

「あっ、あの!突然お邪魔してしまって、すみません。すぐに帰りますので…」

咲希ちゃんに夢中で、お母様の存在を忘れてた…。慌ててお母様のほうにカラダを向けると、頭を下げた。