ぼくのことだけ見てなよ

「じゃあ、明日はゆっくり休みなよ?」
「うん…。ありがと。美島もね」
「うん、じゃあ。また、学校でね」
「うん……」

美島が片手を上げて、わたしに背を向けた。そして、歩き出すと少しずつ遠くなっていく背中…。

「いいのかー?」
「はっ!?な、なんで淳平がいんのよ!!」
「はぁ?ここ、俺ん家でもあるんだから当たり前じゃん」

美島を見ていると、突然横から声がして、驚いて距離を取ると淳平が、わたしではなく美島が歩いて行ったほうを見ながら、話しかけてきた。

「そ、そうじゃなくて!なんで、外にいるのよ!って意味!」
「あー、たまたま窓から外見てたら椿姫が歩いてきたから。でも、なんかさ、変な雰囲気だったから出てきた。その感じだと、まだ付き合ってないんだろ?」
「……いいの、もう。美島は、きっとわたしよりいい人と結ばれるんだから」
「ホント、素直じゃないなぁ。それが椿姫の本心か?美島兄貴が、他のオンナと付き合っても椿姫は平気なワケ?」

そんなの、カンタン…。美島が誰かと付き合っても、平気…だよ。

『椿姫、ぼくの彼女。もう椿姫のことは、好きじゃないから。彼女と幸せになるから。だから、もう椿姫とは一緒にいられないから』

……平気、なハズなのに。もし、こんなふうに言われたって、わたしは……。

「今なら、まだ間に合うんじゃねぇの?走れば、追いつくよ」
「だから、わたしは!」
「じゃあ、どうして泣いてんの」
「や、ヤダなぁ!淳平ったら!わたしが泣くワケ……って、なんで…」

淳平のイジワルだと思っていたのに、淳平に言われて、頬に手をあてて気付いた。わたし、泣いてる…。美島に彼女ができたこと、想像しただけで、泣いてるなんて……。