ぼくのことだけ見てなよ

「遅い」
「へっ!?えっ、なんで…帰ったんじゃ……」

外に出て驚いた。腕を組んだ美島が店のドアの近くにいるんだもん。ゼッタイ帰ったと思ってたのに…。

「普通さぁ、ぼくが帰ったら追いかけてくるでしょ?」
「そんなこと、言われても……」
「すぐに来ると思ってたのに、全然追ってこないし。ホント、脈なさそうだね」
「え、脈って…」
「いや、いいや。ほら、帰るよ。送るから」

美島は、組んでた腕を解くと、先に歩き出してしまった。

「え、でも。美島、ムリって…」
「バカじゃないの?好きな女の子置いて帰るとか、ありえないから」
「………」

美島…こんなわたしの、どこが好きなんだろう…。こんな優柔不断で、いつまでも前に進めないこんなわたしのこと…。

「家、こっちでいいの?」
「えっ、あ、うん…」

わたしは美島のすぐうしろ…背中を見つめながら、ただ歩いた。

「美島、この家…」
「あ、ここ?うん、覚えた。…って、ぼくが来ることは、もうないのかな」

美島が寂しそうな表情(かお)をするから、こっちまで寂しくなる。悲しくなる。苦しくなる。