ぼくのことだけ見てなよ

親といたくないとか言って、結局親のお世話になってるんだよね。でもキライになったわけじゃないから。

たまにごはんを一緒に食べることだってあるし、昔よりは笑顔で笑って話せるようにもなったし。

「イロイロあったけど、今は今で多分いい関係は作られてると思うよ。ただ他にもあってね…」
「他にも…?」
「うん。わたし、一年の時に先輩と付き合ってたんだ」
「先輩と…?」
「うん。先輩のお友達がクラスの子と付き合っていて、何回かウチのクラスに来てて、その時に話しかけられて、付き合うようになったの」

あの時のことは、今でも忘れない。先輩はすごくカッコ良くて、話しかけられるたびにドキドキして。

告白された時は、すごく嬉しくて。夢でも見てるかと思ったくらい。だから、あのことがあった時はココロが張り裂けそうだった。

「先輩とはね、半年くらいのお付き合いだったかな。毎日が幸せで、ずっと一緒にいれるものだと思ってた」
「あまり聞きたくないけど……。なにがあったの?」
「花火大会があったの。その日、先輩は行けないって。どうしても外せない用事ができてって。でもさ、そこでワガママ言えないじゃない?だから素直な女性を演じて、わたしは淳平と花火大会に行ったんだ。淳平が、落ち込んでたわたしを見て行こうと言ってくれてね」
「ふーん、外せない用事ねぇ…」

美島は腑に落ちないのか、クチビルを尖らせ、おもしろくなさそうな顔をした。

「でもね、見ちゃったの」
「見た?なにを…?」
「……先輩、他の女の子と仲良さげに手繋いで花火大会に来てた……」
「はぁ?なにそれ、二股ってこと!?」
「うん…。涙が止まらなくて、それに気付いた淳平がね、先輩とこ行って殴っちゃったんだ…。〝姉ちゃんのこと本気じゃないなら二度と近付くんじゃねぇ!〟って」

淳平の行動には驚かされたけど、嬉しかった…。自分じゃ、できなかったことだったから。

淳平が、代わりに言って殴ってくれて、それだけでわたしは救われたんだ。