ぼくのことだけ見てなよ

「あ。ウワサをすれば淳平からだ。どうしたんだろ、電話なんて珍しい」
「ぼくたちのことは気にしないで、出たら?」
「うん、ごめんね」

みんなに一言謝ってから、電話に出た。なにか起きたんじゃないかと、ハラハラする。

「もしもし、淳平?どうしたの、電話なんて。なんかあった?」
『姉ちゃんっ、どうしようっ…!』
「なに!?なんかあった!?どしたの!?」

淳平がわたしのこと〝椿姫〟と呼ばない時は、なにかあった時だ。多分、余裕がないから…。

「椿姫?弟、なんかあったの?」
「わかんないっ、ねぇ、淳平?どうしたの?言ってくれないと、こっちもわかんないよ?」
『あ……俺……。指…切って、』
「はぁっ!?なんで指なんか!」
『だ、だって…いつも、姉ちゃんごはん作ってくれるからっ。俺も作れるようになったら、姉ちゃん少しは楽になるかなと思って……』
「………」

淳平、そんなこと思ってくれてたんだ…。淳平なりに、考えてくれてたんだね…。

「淳平、そんなこと心配しなくていいんだよ。ありがとうね、気持ちだけで、わたしは嬉しいからね。それで、どれくらい切ったの?」
『……うん。あの、結構深くて…血止まんないんだ…どうしたらいいか、わかんなくて……』
「ちょっと待ってて」

血が止まらないなんて…。わたしのピック事件の時は、美島がいてくれたから、すぐ止まったけど、淳平は1人だし…。どうしようかと、スマホを耳から放した。

「弟、指切ったの?」
「あ、うん…。なんか結構深くまで切っちゃったらしくって、血止まんないって…。身内とかも近くに住んでないし、わたしも駆けつけてあげられないし、あの子不安になってるし、美島どうしよっ…」
「うん、わかったから。椿姫が不安になったら、弟も不安になるからね?電話かりるよ?」
「え?あっ…」

さっきまでは淳平と話してるからと大丈夫なフリをしていたのか、美島に聞かれた途端、一気に不安が押し寄せてきて。そんなわたしの思いが伝わったのか、美島が持ってたスマホをカンタンに取り上げた。