ぼくのことだけ見てなよ

それは、わたしの演技が下手というだけです…。とは、言えずヘラッと笑ってみせた。

そんなわたしに美島が「ん、手」なんて手を出してくるから、思わず手を出したら、ギュと握って歩き出した。

なんだろう。今までとはチガウ気がする…。心臓が異様な早さでバクバクしてる…。

あれ。おかしいな。これまでとは、またちょっとチガウこの感じ…。でも、なにかの勘違いかもしれないし。

ただ手を繋いだってだけで、それにドキドキしてるだけかもしれないし。だから、今は楽しもう。

30分くらいだったけど、海で泳いだり水かけあったりして、遊んで。さて、そろそろ切り上げようか。と、なった時だった。

「椿姫」
「ん?」
「言いそびれてたんだけど」
「うん?」
「水着、似合ってるよ。すごく、カワイイ」
「えっ……」
「じゃあ、あとでね」
「………」

不意打ちはダメだよ…。そんなの女の子みんな弱いでしょ…。しかも言うだけ言って、いなくなるんだから…。

「椿姫ちゃん?どうしたの?」
「えっ?あ、ううん。なんでもないよ。那津、着替えに行こうか」
「……?うん」

うしろから来た那津は、美島の言葉は聞いていなくて、ボーッとしてるわたしに声をかけた。でも、なんにもないフリをして、早く変なドキドキがおさまるように、急いで更衣室へと向かった。