ぼくのことだけ見てなよ

わたしが怒ると美島は、あからさまに大きくため息を吐いた。

「じゃあ、返すよ」
「どうやって返すのよ」

もう口の中じゃない。バカじゃないの?と、思いながら睨みつける。

すると、美島はニヤリと笑った。そして、わたしに言う。

「口移しなら、返せるでしょ?」
「な、」
「ほら、どうする?ぼくとキスして、口移しする?」
「しないわよ!バカっ!!」

あーっ、もう!なんなの、こいつ!!口移しとか、バカじゃないの!?

「いいねぇ、二人!息ピッタリだ!付き合っちゃえば?」
「うっさい、黙って!松木」
「いや、松井だってー!覚えてよー」
「松井も松木も一緒よ」
「うっわ、ひっでー。どう思うよ、楓」
「んー?いいんじゃないの、カワイイ」
「かわっ…」

ダメ、ダメよ椿姫!こんなヤツの言葉に騙されちゃ!!

見た目はチャラくないけど、中身はただのチャラチャラなんだからっ!

ほら、こっち見て笑ってる!罠よ、これは。ただの罠!