「ただいまー」
「椿姫ィ、腹減ったよー。ん?なんか買ってきたの?」
「あー、今すぐに作るから!コレは、水着。ほら、もうすぐ修学旅行だからさ」
「あー、そういうこと。で?あれから美島兄とは、進展は?」
「う、うるさいな!生意気な弟!」
「なんだよ、ウブな姉!」
「あー、そんな態度取るの。ごはん作るの、」
「あー!ウソです、ウソ!!ごめんなさい!」

家に帰ると淳平がお腹をすかせていていた。相変わらず生意気な弟だけど、こっちが有利になる言葉を言うとすぐに謝っちゃうカワイイ弟。

淳平には、あのことは言っていない。きっと心配するに決まっているから。だからあの日は普通にするのが大変だった。

淳平は意外に勘がいいから。もしかしたら、なにか気付いてるかもしれないけど、なにも言われないからどっちなのか、わからない。

「そっちはどうなの?美島妹とは、うまくいってるの?」
「んー、まぁな」
「ふぅん、生意気だね」
「なんだよ!」

あー、やっぱり言えない!美島から、告白されたなんて…。今、落とされかかってる!なんて……。

「修学旅行、来週だっけ?」
「うん、そう。淳平のこともあるから行くか悩んだけど、もう中2だし大丈夫でしょ?」
「はぁ…バカにすんなよ?俺だって、やればできるんだ!」
「そうですかー。あ、わたしがいないからって、美島妹連れ込むの禁止だからね?」
「そ、そんなことするわけないだろ!?」
「あ。連れ込もうとしてたでしょ!アンタね、美島にバレたら、厄介なことになるからね?ゼッタイやめてよ!?」
「わ、わかってるよ…」
「まぁ、家で遊ぶくらいならいいけどさ」
「マジっ!?」

やっぱり、まだ中学生だ。こういう反応はカワイイって、思っちゃう。でも、まだ中学生だからこそ、ちゃんとしておかないと。

「でも、ちゃんと中学生らしいお付き合いしてね?」
「んだよ、それー」
「アンタね、中学生が中学生妊娠させたらシャレになんないからね?」
「バッ…!?わかってるよ!そんくらい!!」
「そう。なら、いいけど。産むにしても堕ろすにしても、お金がかかるんだからね?そこんとこ、よーく頭に入れてヤりなよ?」
「ヤりなよ、って…。普通、そういうこと言うか?」
「しょうがないじゃない、この家にはお母さんもお父さんもいないんだから。わたしが言わなきゃ誰が言うのよ」
「……ちゃんと、わかってるから。そこはさ…」
「そう。なら、お姉さまも安心して留守にできるわ」

ウチには両親がいないから。わたしが、ちゃんとしなきゃ。でも、淳平もちゃんとわかってくれてるみたいだし、安心してもよさそうかな。