「私も和真もまだ何も真相が分かっていないから動けないわね。
矢尋が小さくても良いから何か1つ掴んで来てくれれば動ける。
私は奈桜をずっと守ってるから。
頼む、矢尋!」
「言われなくてもわかってるよ。お前こそ奈桜のこと頼んだぞ。和真。」
「ああ。俺を誰だと思ってんだ?」
また、ニヤリと笑った。
「頼もしいな。」
「当たり前だ。」
本当に頼もしい・・・。
でも、頼って良いのかな?
迷惑じゃないかな?
「私は、和佐に会えてすごく嬉しい。
それに宮野君はまだ出会ったばかりだけど、優しい人だってわかった。
でも、私は人を矢尋も和佐も宮野君も巻き込みたくないよ・・・。」
それ以上優しくされると、甘えたくなっちゃう。
と続けて、うつむいていると
「なんだそれ?」
「そうよ。私達は巻き込まれたくて来たのよ。」
「ああ。それに、本当は俺は優しくなんかねぇんだ。でも、お前が優しいって思ってくれたんなら、思い切り甘やかしてやるよ。」
な?と言いつつ、また笑った宮野君はこの世の人とは思えないほど、綺麗な笑みを浮かべていた。
「…ッ。う、ん…ありがとう…。」
一ヶ月間、毎日緊張して張り詰めていた糸がプツンと切れた音がした。
「ヒック…ッ…ぅ、うわぁぁぁぁあん!!」
「あーあ。和真泣かしちゃったねえ。」
そう言いながら、よっこいせと私の隣に来てギュッと抱きしめてくれたのは、和佐。
「俺のせいか。悪いな。思いっ切り泣け。よく頑張ったな。」
謝りながら頭を撫でてくれているのは、宮野君。
「お前は遠慮し過ぎなんだよ。もっとワガママ言えよ。」
ぶっきらぼうに、でも、優しさが含まれているその言葉を言ったのは矢尋。
「うん。ありがとう。矢尋、和佐、宮野君。」
「どういたしまして!」
「和真で良いよ。つか、呼べ。何かよそよそしくて嫌だ。」
「へ?わ、わかった。和真。」
「お前って実は空気読むのド下手なんだな・・・。」
はぁ、という矢尋のため息が聞こえたと同時に私は眠りに入っていった。


