「………雛」




観覧車が、ちょうど半分にさしかかる所でやっと隼人が口を開いた。



私は、パッっと顔を上げた。


だってね。


この時の隼人の声が、いつも私を呼ぶ時のやさしい声だったから。


だからこの時も、さっきまでの真剣な表情じゃなくて優しい顔をしてると思ったの。






だけど………。



隼人は、真剣な顔じゃないかわりに、悲しそうな顔をしていた。

隼人……。

隼人は一人で何を背負っているの?

その頭の中で何を考えているの?


その悲しそうな瞳は……なにを私に訴えかけているの?