ポンッと手を叩かれ

ハッと我に返った





「蝶子さんどうしたんですか?
いきなり黙っちゃって

フォークも止まっていますし」


「……何でもないわ」




あたしは止まっていたフォークを

再び動かしてハンバーグを

運ばれてから初めて口にする

…冷めていた

当たり前だけど…





「どうしたんですか?
何か考え事ですか?」


「何でもないわよ」




言えない

結の傷痕を見て動揺したなんて

数々の人間を殺め

数々の人間の人生を壊した殺人鬼が

リストカットぐらいで動揺するなんて

…あってはならないことだわ




「そうですか…
何かあったら言ってくださいね

僕で良ければ聞きますから」




ニコッと向けてくれる笑顔が

あたしにとって痛かった