あの時、本当は用事があるんじゃなくて、体調がよくなかったから帰ったんです。
ときどき休憩しながら歩いて、商店街から出たところで爆弾が落とされました。周りが逃げるのを見て私も逃げようとしたけど走れなくて……
逃げるのが遅くなるから他の人に道を譲っていたら逃げ遅れたんです。煙を吸い込んでしまい……
私はそのまま倒れました。
そして、お迎えの人にこのエレベーターまで案内してもらったんです。


零癒の話を聞いて、私は後悔した。そういえば、大会のときもしんどそうにしていた。でも、大事な大会だから無理して出たんだと思う。もし、私があのとき早退するように言っておけば零癒は助かったかもしれない。

「ごめんね……零癒。私が判断を間違えたから……」

泣きながら私は零癒に謝る。

「いいえ……私が無理していなければ……1位になって真遊を悲しませることも無かった……」

一位より、零癒が生きていてほしかった。
泣いたからだろうか頭が痛い。そのまま歩き続けていると零癒が立ち止まる。

「ここから先に行くと本当に死んでしまいます。何か思い出した……?」

全然思い出せない。引き返してエレベーターに乗る?それとも諦めてこの先へ行く?

「もし生きていれば、あっちにある光に入って元に戻れます。でも、死んでいた場合怖い罰が……」

迷ったけど、私は……

「私、そっちには行かない」

「やっぱりそうですか。では、できるだけ戻ってくるのが遅くなることを祈ります」

零癒はまっすぐ進む。私は少し引き返し、右に曲がって光に入る。眩しくて目を閉じると意識が途切れた。