「なるほど……そんな事件があったんですね」

「うん、それで私生きてるのか死んでるのかわからなくなったの」

「それなら、病院に行ってみるのはどうでしょう!」

確かに、病院に行くのはいいかもしれない。家族に聞けば一発だけど、家も焼けたと思うからどこに家族がいるのかがわからない。

「……その前に、お母さんのお店に行っていい?」

「えっ!お店、やってるかな……?」

璃兎が桃子に、お店は今もあるよと教える。目印となる標識が今も残っていたので場所はわかった。

「確かここらへんだった……」

「無いですね……」

お店は跡形もなく焼けていた。焼けてから、一度もお店を開いていないみたいだ。

「まさか私が死んでショックで……」

そう考えると悲しくなってくる。私は親に恩返しも何もしていない。

「おや、ここのお店の娘さんかね?」

髭の生えたおじさんに後ろから話しかけられた。私が見えるのかなと思ったけれども、話しても返事がないので見えていないらしい。

「いえ、私は違います。あの、ここの店員さんの娘さんについて何か知っていることを教えてください」

「あまり知らないけど、あの事件の後誰も見ていないなぁ。お母さんはそのあとお店に出てこなくなって……これぐらいしかわからない」

「教えてくださってありがとうございます」

おじさんは去っていった。

「あとは……家にだれかいる?」

璃兎は本のページをめくりながら聞く。

「わかりません……もしかしたら、お母さんがいるかもしれない」

私の家は母子家庭で兄弟はいない。だから家に誰かいる可能性は低い。

「とりあえず行ってみましょう」

「うん」

2人とも私のために頑張ってくれていることはわかる。でも、私の謎に近づくたびに怖くなる。もし、死んでいたらどうしようって。生きているなら早く元に戻りたい。けど、死んでいるなら知りたくない。まだ心の準備ができていないから。