私は生きているのか、死んだのかがわからない。多分、あの状況では死んでいるんだと思う。けど、そのときの記憶がないから生きている可能性がないわけではない。


私が通っていた学校は他とはちょっと違っていて、4~5人の班を作って点数を競っていた。これをダイアモンドと呼んでいる。
点数は、テストやスポーツや日頃の生活で決められる。私たちの班は点数が学年最下位で、いつも馬鹿にされていた。
でも、私の友達の華美(はなみ)が1位になってこの学校を変えようと言った。1位になれば、先生も逆らえない。
私たちは努力をして、最下位から10位になった。1位が近くなり、努力は無駄じゃなかったと喜んだ。

しかし、ここで勝てば1位になる、そんな大きな大会のときに皆の調子が悪くなった。その大会は、勝てば1位になれるけど負けたら最下位になるのだ。緊張したせいか練習では出来たことが、本番で出来なくなったのだ。

「もう、だめだね」

「うん。でも最後は全力で、かっこよく走ろう!」

最下位が確定した後だったけど、どのチームよりも速く走った。そこにいた人達は最下位なのに拍手してくれた。

「最下位でも、学校は変えられる。1位より難しくなっただけだよ!」

華美は負けてしまった私たちを励ました。

「ちょっと難しいほうが面白いもん。負けたのは悔しいけど、気持ちを切り替えて月曜日に備えよう!」

まだ私たちは卒業していない。チャンスはある。土日のあいだに何をするか考えよう。

「そうだな。卒業する前に何か派手なことやりたいな」

「放送でみんなにアピールするのはどうでしょうか……」

さっきまで落ち込んでいた健太と零癒も、月曜日に向けて考えてくれた。確かに、放送を使うのはいいアイデアだと思う。放送なら後輩たちにも伝わるから、私たちが卒業した後も学校を変えようとしてくれる生徒が現れるかもしれない。

変えなくてはいけない。ダイアモンドの点数ですべてが決まるこの学校を。そして、みんなが楽しく通える学校にするんだ。そのために、今自分たちが出来ることをする。

「ばいばーい!また月曜日に会おう」

「明日メール送るからな~」

「うん、みんなで相談しよう!」

健太と華美は家が別の方向だし、零癒は用事があって先に帰ってしまった。だから、1人で帰らなければならない。

「なんか学校が凄く変わりそうでわくわくするよ」

早く月曜日にならないかな~と思いながら、帰り道の商店街を歩く。このときはまだ、月曜日は来ると思っていた。