「ここが太部……」

空気がどんよりとしていて建物はそんなに古くないのに廃墟に見える。ずっと見ていると憂鬱になってくる。

「まわりを見ず、まっすぐに歩いて。そして、できるだけ嫌なことは考えないようにしてね。そうじゃないとあの病気にかかってしまうわ」

私は前を向いて、楽しいことを考えて歩いた。たとえば、この問題が解決した後また一緒に桃子と遊びたいな……とか。桃子の家に行くのはお母さんが厳しいらしいから無理かもしれないけど、私の家で遊ぶことだったらできそう。

「ここに南天が持ってた試験官が落ちているわ……きっとこの塔に南天と桃子ちゃんがいる」

オレガノさんは、試験管を拾ってそう言った。私は、この塔に見和さんもいる予感がする。きっと最上階に3人ともいる。

「オレガノさん、この塔の最上階に行きましょう!」

「わかったわ」

目の前に扉があったけど、ここから上るより裏にあるエレベーターを使ったほうが早いとオレガノさんが教えてくれた。エレベーターは普通に動いていて、無事私たちは最上階にたどり着くことができた。

「きっとこの部屋にいるはず……」

重い扉を2人で開けると、大きな機械の向こうに桃子がいた。桃子は私を見つけたとたん、泣き顔で

「笑莉!助けて!」

と叫んだ。

「もちろん!」

私は親指を立てて、グッドサインをだした。