‐時間:12:02 場所:特殊急襲部隊 本部

バシャバシャ……

雨の中、傘なしで走っている。必死な思いで本部に到着した。

「はぁっ……ちくしょうっ!」

見張りの部下3人が倒れているのが見えた。急いで駆け寄り、生死を確認した。すると、1人はなんとか生きていた。俺の顔を見つめ、かぼそい声で俺に言った。

「……っは……ヘッドと…ペインが……人質となってますっ……要求は…あなた…ですっ…何を考えてるのかっ……カハッ……!」

血を吐きながら報告をする部下に俺は、

「もういいっ…喋んな……よくやった。だからもう、自分を大事にしてくれ。」

すると部下は咳き込みながら軽く笑うと、

「いっ…今更そのようなこと……言わないで下さいよっ……あれだけっ…厳しくしごいといて……。」

「はっ……そうだな。」

部下は涙目になりながら言った。

「ありがとう…ございましたっ……あなたの…部下になれて……よかっ……た……。」

ここまで言うと、部下の目からは一筋の涙が流れ、雨と混じり、落ちた。彼の身体が徐々に重く、固くなるのを感じた。

「……礼くらい最後まで言えっての……。」

俺は悲しみに顔を伏せた。それと同時に、とてつもない怒りと憎しみに襲われた。そして、本部の中へと入った。

‐時間:12:17 場所:特殊急襲部隊 本部内

「っ……はっ……はぁ……くそったれ……こんな時にっ……!」

しんと静まりかえった本部内で、1人廊下を進む。しかしその足どりは重く、更には息もあがっていた。その理由は、数ヶ月前の傷のせいだった。雨による湿気なのか、低気圧によるものなのかは不明だが、胸から背中を突き抜ける痛みに苦しめられる。

『っ……なんで今更こんな風にっ……昨日は問題なかっただろうがっ……!!』

「っ、あ……く、そ……はぁっ……!」

胸元をぎゅうっと握り、壁伝いに歩いて行く。耳の中で心音がバクン、バクンと大きな音をたてている。

「くっ……!」

ズキンと1番の痛みが、俺の歩みを止める。拳を握りしめ、痛みに耐えるのに必死だ。胸を反ることも背中を丸めることも出来ないこの状態に、冷や汗が額をぬらした。傷に障らぬようにゆっくりとしゃがみ、床に膝を付く。最悪のコンディションで最悪な状況、よくないことは続くものだ。