遠くで聞こえるのは、
慌ただしい人の声と
ストレッチャーの音。
近くで聞こえるのは、
勢いよく波打つ心臓の音と、
耳障りなサイレン音。
「…祐、大丈夫か?」
「…悪い。」
律が買ってきた飲み物を受け取ると、
頭の中の真っ白な部分を追い払った。
「…………」
あの時、もし律がいなかったらと思うと、背筋が凍る。
俺は何も出来なかった。
救急車を呼んだのも、
様態を話してくれたのも、
全部律だ。
握った手から伝わるのは、
冷たさと震えだけ。
「…祐…大丈夫か?」
「あ…あ…」
歯切れ悪い言葉。
喉に絡み付いたものが、
剥がれないで残っている。
「…芙由ちゃんにはまだ、聞いてないんだろ?」
「何が?」
「………倒れるような理由…」
気まずそうに俺から目を背けた律は、苦しくて険しい表情を浮かべていた。
「…俺から言えるようなことじゃないから、直接聞いて。」
「……わかった……。」
俺はこの時の律の言葉を理解なんて、してなかった。
でも何故だか、自然と覚悟を決めていたんだ。
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