戻るといっても大飛鳥の数は土人族に撃ち落とされ、全員を乗せるには数が足りなかった。


結局、功賀隊長と傷を負ったものを合わせる複数名を残し


明星の里へ戻ることになった。


「伝令は飛ばしたけれど、もうすでに手遅れかもしれない」


かぐやは唇を噛んだ。


「里には里長も白虎もいる。なんとかしてるさ」


出発のとき、かぐやの大飛鳥にサッサと乗り込み、かぐやの背後から手綱を操っている銀司が軽く答えた。


銀司とて里が心配でないはずはないだろうに、それを隠して気丈に振舞っているのであろう。


かぐやはこれ以上不安を口にしてはならないと思った。


大飛鳥を乗りこなすのは難しいが、かなりの持久力と飛行速度を持っているので里守の移動手段としてよく利用されている。


しかし、二人載せているのでどこまで連続飛行できるかが問題だ。



「俺のことも心配したか?」


不意に銀司が尋ねた。


「うん、すごく」


「へぇー、素直なかぐやもいいな。前にも同じこと聞いたとき、『人に心配されるほど自分が弱いとの自覚があるならもっと修行しろ!』って怒鳴られたっけな」


銀司がくくくっと笑った。


かぐやには別人の話のように聞こえてならない。


「そうなんだ。元の自分に戻れるかな」


そう風の中でつぶやくと銀司がかぐやの耳元に口を寄せた。


「銀ちゃんって呼ばれるのにも慣れたし、今のままで充分だろ。かぐやはかぐやなんだから」


「か、顔近いよ銀ちゃん」


銀司の吐息が顔にかかって、慌てて手で銀司の顔を押しのける。