「ただいま……」
恐る恐る玄関のドアを開けると、
「凛子っ……!よかった、無事だったのね。心配したのよ?!」
目にたくさん涙を浮かべるお母さんが待っていた。
予想外のお母さんの反応に私はただ、戸惑っていた。
絶対に、怒られると思っていたのに。
まさか、こんなに涙を流されるとは思ってもいなかった。
「心配かけて、ごめんなさい」
「もう、本当に馬鹿!こんなに大事な娘なのに……何かあったのかと思って不安だったじゃないの」
そう言うと、ギュッと力強く私を抱きしめた。
大事な娘、という言葉にジーンときて、私も思わず泣いて、ごめんなさいと言いながらお母さんを抱きしめた。
こんなに、私のことを思ってくれてるなんて、知らなかった。
いつも、勉強勉強で、それ以外のことは私には何も期待とかないんだって。
「あのね、お母さん。私、絵を諦めたくないの」
「凛子……」
「勉強ももちろん頑張るから……!絶対どっちも、頑張るから。芸術大学に行きたいです。だから、絵をちゃんと習いたいです。お願いします!」
私は、深く頭を下げ、ギュッと目を瞑りながらお願いした。

