「何」
彼がそうボソッとぶっきらぼうに呟き、私は慌てて説明した。
「あっ、えっとね。山河くん今日、日直でしょ?私、今日は教室で残りたいなって思ってるから、鍵かしてくれないかな?私が帰る時、鍵閉めて帰るからさ」
「……」
彼の長めの黒い前髪が窓から吹いた風で少しふわっとなびいた。
透き通った瞳でじっと私の方を見つめてくるから、
私は思わず照れくさくて、目を逸らしてしまった。
「あ、えっと……」
「いいよ、別に。俺、笹木さんが帰るまで待ってるし」
「えっ……?」
目線を彼のほうに戻し、予想外の返事に私は硬直した。
まさか、そんなことを言われるなんて思ってもなかった私は、
ただ口をパクパクさせることしかできなかった。
そんな私に彼はフッと鼻で笑った。

