私はその姿に息をのんだ。
山河くんって、そんなこともしちゃうんだ……
ちょっと前までは彼がこんな人だなんて思いもしなかった。
なんて優しいかっこいい男らしい人なんだろう。
私は胸がキューっと締め付けられるような感覚がした。
「わあ!お兄ちゃんかっこいい!」
女の子の感動する声と、お母さんの心配する声。
そんな声が混じる中、彼はなんともないように風船を簡単に取ってみせた。
「はい、もう手から離しちゃだめだよ?あと、あんまりお母さん困らせちゃだめだよー?」
と言って、女の子の頭をポンポンと撫でていた。
女の子はうん!と大きく頷き、お母さんは丁寧にお礼を言って、彼女たちはその場を去っていった。
私はただひたすら、そんな山河くんをじっと見つめているだけだった。

