窓際の山河くんの隣は。


「どうしたんだろうね?」

私が首をかしげて小さい子の方を見ていると、山河くんはすぐにその子のところに駆け寄った。

私は咄嗟に彼の後を追って、少し後ろに立った。


「あの風船、欲しいの?」

山河くんがしゃがんで、小さい女の子と同じ目線で優しく聞いていた。


ほんとだ。
木に風船が絡まってる。

「うん、あのね、手はなしたら風船がとんでいっちゃった。お兄ちゃん、とれる?」

「こら!何言ってるの!すみませんうちの子が……さっきからあの風船取ってって言って泣き止まないんですよ……取ってあげたいんですけど、あの高さはちょっと……」


女の子のお母さんが困ったようにそう言うと、


「――っ……!!」


山河くんが軽やかに木に登って、風船を取ろうとしていた。