「どうしたんだろうね?」
私が首をかしげて小さい子の方を見ていると、山河くんはすぐにその子のところに駆け寄った。
私は咄嗟に彼の後を追って、少し後ろに立った。
「あの風船、欲しいの?」
山河くんがしゃがんで、小さい女の子と同じ目線で優しく聞いていた。
ほんとだ。
木に風船が絡まってる。
「うん、あのね、手はなしたら風船がとんでいっちゃった。お兄ちゃん、とれる?」
「こら!何言ってるの!すみませんうちの子が……さっきからあの風船取ってって言って泣き止まないんですよ……取ってあげたいんですけど、あの高さはちょっと……」
女の子のお母さんが困ったようにそう言うと、
「――っ……!!」
山河くんが軽やかに木に登って、風船を取ろうとしていた。

