私は怖さはもうなかった。


ただ、助けたい。

その一心だった。


私は授業中もずっと隠れて「赤ずきん」を読んでいた。


あの「赤ずきん」の話を完全に頭にインプットした。



この話をハッピーエンドに変えるには、狼がおばあさんを食わないようにしなければならない。


それには狼をおばあさんの家に行かせてはならない。


てことは、私は狼を足止めしたらいいんだ。


もしくは、先に殺してしまう。


それしかない。


この「赤ずきん」は童話ではなく、リアルな感じで書かれているから、私達が知っている「赤ずきん」にすることはできない。


オリジナルを作らなきゃいけない。


エリナ先輩の言葉が蘇る。

『白ずきんが赤くならないように物語を作り直さないといけないんだって。だけど、それは別世界に行って自分で未来を変えなきゃいけないとダメなんだって。』



自分で未来を変える。


つまり、オリジナルに物語を作る。


そういうことだろう。


やってみるしかない。


私は心を決めた。



そして、放課後。



私はさくらにはこのことを伝え、絶対に忘れないでねと言い残し、旧校舎にきた。



もしかすると、みんなに忘れ去られて、かつ死ぬかもしれない。


でも、助けたい。


私は念のため、「赤ずきん」の本を持ってきていた。


何か役にたつかもしれないと思ったからだ。


そして、私は図書館へと入った。


「すみませーん。誰かいますかー?」


返事はない。


どうやら、私一人だけのようだ。


私は深呼吸し、そして言った。


「私の頭巾は真っ赤な頭巾。綺麗な真っ赤に染め上げたかわいい頭巾。
狼の腹を切り裂いて色を浸けた呪いの頭巾。
私の頭巾を返してください。」


すると、目の前に真っ赤な頭巾が現れた。


「ああ…、ほ、本当に現れた…。」


私は怖くなってきて、震えが止まらなかった。


ゆっくりと突然現れた赤い頭巾を私は拾った。


何も起きない。


すると、

「キャハハハ!」

あの笑い声が聞こえた。


その途端、赤い頭巾が私の顔を包み込んだ。


周りが真っ赤になった。

何も見えなくなった。


そして、頭巾をはずされた。


周りを見ると、全く知らない場所だった。