紅ずきん



「アリス、ごめん帰ってくれ。」

「何で?!こんなところにいたら可怪しくなっちゃうよ?!」

「僕たちはもう、現実には戻らない。この世界でも十分幸せだ。」


ありえない。
何で?何でそんなこと言うの?


私は二人を助けに来たのに。


私はいらないの?
来た意味はないの?


酷いよ。
酷いよ皆。


私がいらないんだったら、私も皆はいらない。


「二人とも、消えればいい。」


すると、鍵がしまっているはずなのにドアが勝手に開き、中に頭巾が入っていった。


まるでペットみたいだ。


そして、さくらのときのように、二人を包み込んだ。


「アリス!アリス!やめてくれ!なんだこれは?!アリス!」



雪兎が必死に助けを呼んでいる。

でも、もう遅い。
一度私を捨てたのだから。

今度は私が二人を捨てる。


みーんな捨てる。


「うああああああああ!!!!」


雪兎が悲鳴をあげた瞬間、紅い液体が流れた。


ああ…。
綺麗…。何度見ても綺麗だなぁ…。


もっと、もっと紅くなれ!

「あははははは!」

もう、笑いが止まらない!

なぜ可笑しいかわからないけど、笑いが込み上げてくる。


まだまだ足リナイ。


もう誰でもいいから殺したい。

腹を切り裂いて綺麗な紅を出してあげる。


私が頭巾を取ると、中で腹が裂かれて綺麗…無惨な姿になった雪兎とエリナ先輩がいた。


まだ笑いが込み上げてきた。

そのときだった。
頬に温かい何かが伝った。

触ると、水だった。

泣いていた。


「え…?何で私泣いているんだろう。こんなに面白いのに。」

すると今度は笑いではなく、後悔が心の奥底から込み上がってきた。


「あ…れ…?何で…私こんなことしたの…?私はただ、二人を助けたかった。ただ…二人と一緒にいたかっただけなのに…。」


私は取り返しのつかないことをしてしまった。


もう二度と会えない。
もう二度と救えない。


消えたのだ。


「ああぁぁぁ…。いやだぁ…。雪兎…エリナ先輩…!」


泣いても泣いても何も変わらない。
ただ目の前が紅く染まっているだけ。



この頭巾が無ければ…。


突然、この頭巾が怖くなってきた。
あの赤ずきんがつけていた頭巾。


こんな頭巾、消えてしまえばいい。


「頭巾なんて、消えてしまえばいい!」


ところが、頭巾は消えない。
何も反応しない。


「消えて!消えてよ!」


《私は消えない。あなたはもう、私に取り憑かれたの。これからはあなたが『赤ずきん』よ。》


「私が…赤ずきん…?何よそれ…。」


すると、また誰かを殺したい衝動が襲ってきた。


ああ、そうか。

私は赤ずきんに取り憑かれていたんだ。

あの涙は私の自我。
でも、もう遅いんだ…。


ああ…。
何も考えられなくなってきたな…。


誰か、大切な人を忘れてる気がする。
誰だっけ…?


でも、会いたいな…。


何でかな…?


ああ、どうでもよくなってきた。


とにかく、


誰かコロシタイ。



その瞬間、私の自我は失われた。