紅ずきん


もしかすると、ここに隠れているんじゃないか。


そんな小さな希望を胸に図書館に入った。


でも、どんなに探しても悠太はいなかった。


「いやぁ…。悠太ぁ…。約束、したじゃん…。」


涙が次から次へと流れてくる。


さらに最悪なことが続いた。


どんなに頑張っても、悠太の顔が思い出せない。


悠太という存在はわかるのに…。


「嫌だ、嫌だ!忘れたくない…!早く戻ってきてぇー!」


でも、私の声は虚しく図書館に響くだけ。


そのときだった。


カタン…



少し遠くで何かが落ちた音がした。


私は慌ててそこに向かった。


すると、そこにあったのは、悠太のスマホだった。


「悠太?!いるの?」


叫んだけど、返事はない。


どうやらスマホだけが残されたらしい。



私は悠太が動画を録ると言っていたのを思いだし、保存されている動画を見た。



『今から、図書館に入ろうと思います。』

悠太が映っていた。

カメラの向きが変わり、悠太の目線と同じになった。


ゆっくりと図書館に入っていく。


『今、図書館には俺一人で誰もいません。試してみます。』


悠太は童話がたくさん置かれている場所に行った。


そこから、「赤ずきん」と書かれた本を一冊手に取った。


『私の頭巾は真っ赤な頭巾
綺麗な真っ赤に染め上げたかわいい頭巾
狼の腹を切り裂いて色を浸けた呪いの頭巾
私の頭巾を返してください。』


悠太が不思議な言葉を呟いた。


すると、目の前に真っ赤な頭巾が現れた。


『マジで現れた…。それじゃあ、触ります。』


悠太はゆっくりとその頭巾を取った。


だけど何も起こらない。


『やっぱり、何も起きないじゃん。』
『キャハハハ』
『だ、誰だ!』


不気味な笑い声が聞こえてきた。

すると、動画がぶれた。
何が起きているのかわからないくらい。


そして、やっとブレが治まった。


だけど、そのときにはもう悠太も、赤い頭巾もなくなっていた。


そして、動画は終わった。