あのあと、私はすぐに図書館のおまじないや魔法関係の本を読み漁った。


悠太は呆れて、諦めたように帰っていった。


私はもとの世界に戻ってからまだ時間を見ていなかったから、全く今が何時なのかわからなかった。


でも、そんなことも考えられないくらい、私は必死だった。


気がつくと、外は真っ暗だった。
帰ろうとドアを押したが、開かなかった。


鍵をかけられたらしい。


私はこれはチャンスとばかりにさらに本を探して読んでいった。

夜が明けるまでそれを繰り返した。



翌日、私はさくらに起こされた。


「アリス?アリス!戻ってこれたんだね!」

「ん…。あ、さくら!」



私はいつのまにか寝ていたようで、時間はもう11時になっていた。


今は休み時間らしい。


私はさくらに私の計画を話した。


「そうだったんだ…。悠太が珍しくアリスと話さないから、何かあったのかなって思ってたけど、そんなことが…。でもね、私も悠太の考えに賛成だよ。二人のことに首を突っ込むのはダメだよ。生きているならそれでいいじゃん。どこかで二人は幸せに暮らしているんだから。ね!」
「…んで……ないの…?」

「え?」

「何で皆わかってくれないの?」

「あ、アリス…?」



みんな、みんな同じことを言う。

あんな世界での幸せよりも、現実に戻ればもっと、もっと幸せになれるのに。

だから、私は二人を助けてあげようと思っているのに。



みんなは見捨てるの?
本当の幸せを手に入れられない二人を。助けてあげられる二人を。

見捨てるの?


可愛そうだよ。
だから、私がたすけてあげる。


待っててね。
すぐに、いくからね。



私はいつでも二人の味方だから、ね。


「アリス、どうしちゃったの?!」

「私は何も変わってないよ。ただ、皆が理解してくれないんだよ。お願い、さくら。私に協力して!私たち、友達でしょ?」

「アリス…。それは、違うと思う。私は…友達だからあえていうけど、アリスは間違っている。私は協力できない!」

「さくら…。酷いよ…。さくらは友達と思っていたのに。」

「…っ。で、でもっ!ダメだよ、それは。」

「もういい。さくら、消えて。」




私がそう呟いた瞬間だった。

いつのまにか私の背中にかかっていた、真っ赤な頭巾がさくらに覆い被さった。


そして、頭巾の中から深紅の液体が流れてきた。


さくらは倒れた。


私はゆっくりとそこへ近づき、頭巾をめくった。
すると、さくらは腸をえぐりとられていた。


とても悲惨な光景…のはずなのに、私の口からこぼれ落ちたのは笑みだった。



「あは…あは、あははははは!あははは…はあ、はあ。」


なぜだろう。


綺麗だ。美しい。

鮮血の赤。

赤、朱、紅。



もっと…モット…、ホシイ…



そのとき、私の中の何かが壊れた。
崩壊した。


私は1つの呪いの本を取り、本に描かれている魔方陣を紙に描いた。


そして、呪文を唱えた。


すると、異世界へと続く穴が現れた。